テクニカルイラストレーション技能士のブログ

日本ビジュアルコミュニケーション協会の会員が綴る、日常の出来事です。仕事関係が多いかな???

特許図面作成講座(実践篇)へのご参加、どうもありがとうございました!

三連休初日、台風がくるのか来ないのか大分ヤキモキさせられましたが、無事に「特許図面作成講座(実践篇)」を行うことができました。
予想以上に天候は良好で、夜には台風の影響で強くなると思われた風もほとんど気にならず、帰りは安心して皆さんを見送ることができて本当に良かったです。

さて、今回は、特許図面作成者の皆さんご自身で特許図面の内容を考え、
描いてみることがメインの講座でした。
東京での開催にも関わらず、兵庫や大阪など遠方の方にも足を運んでいただきました。
また、中には明細書作成をされている方、弁理士の方もいらっしゃったんですよね(おかげさまで、それはそれはもう、大緊張しました…)。

今回の作図課題は、二つ。
前回同様、機械系の発明(物の形状や構成に特徴がある発明)の図面ですが、具体的には、腕時計のばね棒と、自立するしゃもじの図面でした。
実際に受講生の方に描いていただいた図面の一部を、ご覧ください。

zumen

うおー、すごい!!
さすがプロ、と唸りたくなる出来ですね〜。
この図面は、特許図面作成暦ウン十年の、ベテラン中の大ベテランの方が今回のセミナー中、あっという間にサラサラサラ〜と作成された図面です。
課題中、符号の指定は一切していないのですが、経験を積まれると「大体この辺りに符号が入りそうだな」というのが感覚的に分かるのでしょう。
実にいいところに符号が入っています。

「こんなすごいの、自分には描けない!」と思われた方、ご安心ください、全然大丈夫ですよ。
ここまで描けるのは、やはり経験の力。
ですので、一歩一歩、ゆっくり確実に経験を積んでともに進んでいきましょう。

当日お渡しした作図例は、このような華麗な図面ではなかったと思いますが(斜視図の数が少なく、正投影図が多いと、華麗さはやはり控えめですかね…)、それでも十分合格点に到達しているものです。
要は、押さえるべきポイントをきっちり押さえているか否かが大切、ということです。
(そういう意味では、大多数の受講生の皆さんが作図例に近い図面をきちんと描いていらっしゃいました。お見事です。)

なお、最近発行された公開公報で、今回皆さんに描いてもらった時計のばね棒とちょっと似ているものがありました(特開2018-38470号)。
発明の課題も特徴も異なるので、図面の内容も当然異なっていますが、
今回皆さんが描いた図面やお渡しした作図例と、作図の発想自体が近いことが分かるのではないかと思います。
興味のある方は、J-PlatPatで検索してみてくださいね。

という訳で、当日、迷ったり悩んだりしつつ沢山図面を描いていただいた受講生の皆さん、本当にどうもありがとうございました。
出題した側のわたしが「!?」と言葉に詰まるような、ご質問やご指摘、発見の数々(「この発明、ここはどうなんですかね」「…ファッ!?」みたいなのが結構あったな(笑))を聞いて、わたし自身も非常に勉強になりました。
こうして皆さんと切磋琢磨して、いつか揃って「ベテラン中の大ベテラン」の称号を得られる日が来るのを夢見て、がんばっていきたいですね!!

ではまた!

【特許図面の作成に関するアンケート】結果のご報告_番外編

まだやんのかーい!という声が、どこかから聞こえてきそうですが、すみません、もう一つだけ。
今回のアンケートにお寄せいただいた、ある方のご意見を紹介させていただきます。

「特許事務所勤務です。
正直品質について事務所からなにか言われたことは一度もありません。
明細書担当者は仕上がりを気にしません。
なのでただ言われたまま作図をしているとモチベーションが維持できません。
クライアントや審査官を意識して作業をし、指示から大きく外れない程度に「色」をつけることでやりがいのある作業となり
品質向上につながっているのではないかと思って日々作業しています。」


このご回答を見たとき、わたしはチクッと心になにか刺さるような、何ともいえない痛みを感じました。

いや、チクッというより、グッサリきました。
こう、893が持ってるドスでお腹グッサリ、血がドバー、みたいな。
なぜでしょう。
それは記憶をたどると、似たような環境で、同じやるせなさを感じた経験があるからなんです。

わたしは、「仕事」というものは、個人が収入を得るための手段であると同時に、その個人が属する社会に参加し、貢献することで社会とのつながりを実感し、生きる喜びを得るものだとも考えています。
ですから、どうせ図面を描くのなら、役に立つ、誰かを喜ばせる図面を描きたいと思っています。
あなたに任せて良かった、またお願いするよ!と言ってもらえるような図面です。
だから、JAVCと関わる以前にもできるだけ自分で特許図面に関する情報を探し、描き方を模索し、早く正確かつ綺麗に描くための努力をしてきたつもりです。
ところが、
「特許図面だから、ササッとテキトーにやってよ」「雑でもいいから」「なんとなく分かる程度に描いてくれればいいよ」
そんな声を耳にすると、なんのための努力だよ、そんなの必要とされてないし、無駄じゃないか、と幾度となく心が折れそうになったもんです。

でも、その後の経験の中で、次第に、
特許図面は雑で良いわけがないし、「図面がすべて」といえるほど図面が大切な案件もあるし、特許図面は「テキトー(=いいかげん)」ではなく「適当(=ほどよいこと)」でなければならない、ということを学びました。
上のご意見を書かれた方の言葉を見る限り、様々な工夫を重ねたことに対して「品質向上している実感」はまだ湧いていないのかな?と思いますが、その努力はいつか必ず実を結ぶときがくると、わたしは確信しています。

わたしがJAVCで特許図面に関するさまざまな活動を行っているのは、いまだにある現場の無理解(「特許図面はテキトーでいい」に代表される無理解)に対して、
さらに、その無理解に阻まれてどのような働き方をすべきか迷っている方々に対して、何ができるだろうかと考えた末の、答えのひとつでもあります。
ごくごく小さな活動にすぎませんが、まずは横のつながりを作り、有益な情報は互いに共有し、皆でステップアップしていくこと。
さらに、努力してステップアップした人が描く図面の品質のよさに触れてもらって、現場を少しずつ、少しずつ、変えていくこと。
そして、そんな良質な図面を描ける図面描きが、正当に高く評価される現場を増やしていくこと。
単なる理想論といえばそうかもしれませんし、実際に叶う夢なのかは分かりませんが、どんなことでもやってみなければ答えは出ません。
これからもあきらめずに、淡々と、粘り強くがんばっていきます。


今回、アンケートのご回答を通して、たくさんの特許図面作成者の皆さんと会話をさせていただいたような、そんな充実感に包まれました。
特に謝礼もないというのに(ごめんなさい)長いアンケートにご協力いただいた特許図面作成者の皆さま、心より御礼申し上げます。
実は、今回の結果を活かして、また新しい企画を考え中です。
どうぞ引き続きお付き合いください!

***

ここで、またまた宣伝(すんまへん)。
10月6日に、「特許図面作成講座(実践篇)」と銘打って、特許図面の作成実習を行います。
どのような内容かというと、身近な発明の特許図面を、自分の力で描いてみる、というセミナーです(前回の初級編では、ダブルクリップを取り上げて、皆さんに図面を描いてもらいました)。

特許図面作成者は普段、依頼された下図を特許図面に仕上げるお仕事をされているものと思います。
自分で特許図面の内容を考えることは、あまり経験がないという方、中には全く経験がなく、それをする意味もよく分からない、という方もいらっしゃるでしょう。
では、どうしてこのような形式のセミナーを行うのか、というと。

わたしは以前、とある特許事務所の明細書担当者の方に、こんなことを言われたことがあります。
「きみたちが描いているのは絵やイラストじゃない、技術の表現なんだ。」

そう。
特許図面とは、発明の技術的特徴を、分かりやすく人に伝達するための(広義の)テクニカルイラストレーションなんです。
身近な発明を自分の力で特許図面にするということは、受講生の皆さん自身が思う発明の技術的特徴を、図面を使って(人に伝わるように)表現するということです。
ここには、特許図面の本質が山ほど詰まっています
ですので、このような経験を積むことで、普段自分で描いている特許図面が表す意味を理解しやすくなったり、図面に表れる重要なポイントを見つけやすくなったりと、様々な気づきがあると思います。
ご興味のある方はぜひ、ご参加ください。

それでは、また!

【特許図面の作成に関するアンケート】結果のご報告〔5〕_完結編

先月から募集していた『特許図面の作成に関するアンケート』の結果報告です。
まさかの大長編と化してきましたよ、ハァハァ…(疲労)。

(6)意識調査(つづき)

最後になりましたが、以下の三つの設問は、品質と時間のどちらを重視する傾向にあるかを問うものです。
一つ一つ、詳しく見ていきましょう。

(6-6-1)細部までこだわって丁寧に描きすぎるのは、時間や手間を無駄にすることになる

6-6-1

この(6-6-1)では、「細部までこだわって丁寧に描きすぎる」という、品質重視への「やや過度な」こだわりに対する反応を見てみました。
その結果、キャリア関係なくほぼ80%が、「当てはまる」「やや当てはまる」という回答となりました。
前回、図面は見た目が大切だという話をしたばかりですが、やはり特許図面は芸術作品ではありませんので、膨大な時間と手間を一図に注ぎ込めるわけではないのが現実です。
したがって、八割以上が、細部にこだわりすぎることを嫌う傾向があるようです。

特許図面作成者というものは、つねに時間と品質のバランスの狭間で、どの程度が「ちょうどいい具合」なのかを見極める必要があるんですよね。
でも、それって意外にサジ加減がむずかしい。
実際、どうでもいいところに(それがどうでもいいところだと気づかず)こだわって時間をかけすぎてしまうなんてことは、実務的にもありがちで、よく聞く話です。
(そして、そういうタイミングで明細書書きに「特許図面なんて適当でいいんだから、ささっと描いてくれる?」なんてイヤミを言われて、いろんな意味でカチンときたりして。)

これは前回のセミナーでもお話しましたが、クライアントも明細書書きも、発明や図面のポイントとなる部分はきっちり図面に描いてほしいと強くこだわりますが、ポイント以外は正直どうでも良いと考える人が多いです(程度の差は、もちろんあります)。
ですので、ポイントなのかポイント以外かを嗅ぎ分けるスキルというのは、特許図面作成者にとって非常に大切です。
丁寧に描く範囲をポイントのみに絞り込み、それ以外はある程度手を緩めることができるからです。
その結果、短時間で品質の良い特許図面を作成することが可能になるというわけです。
では、どうやって嗅ぎ分けるか…、なんて話をここで始めると長くなりますので、それはまたセミナーなどの折にお話ししようと思います。

(6-6-2)図面が少々雑になっても、短時間で仕上げることの方が特許の場合は大切だ

6-6-2

次の(6-6-2)では、「図面が少々雑でもいいから短時間で仕上げる」という、少し行きすぎた時短重視に対する反応をみました。
「少々雑」というのがポイントです。つまり、図面の品質を落としてでも時短を選ぶか、という話です。

『ベテラン+中堅』層は、過半数がこの「時短偏重主義」には賛同していません。
一方で、『若手+新人』層では、「どちらともいえない」を挟んで、賛同派と非賛同派がちょうど睨み合うかのように拮抗する結果となりました。
実は、前々回に結果を報告した(5)の何を重要視するかのアンケートでも、「短時間で描くこと」の『若手+新人』層の平均スコアは4.3であり、『ベテラン+中堅』層の平均スコア3.9を上回っています。
総合すると、『若手+新人』層では品質より時間短縮に重きを置く傾向が『ベテラン+中堅』層よりも強い、という結果になりました。
『若手+新人』層では、時間を短縮することへの肯定感(あるいは、時間をかけることへの拒否感、不安感)が強いのかもしれませんね。

このように、特許図面において「時間短縮」と「品質」、どちらを重視するかは悩ましい問題です。
費用対効果を考え、一定の品質も守りつつ時間というコストをどこまで費やすか、特許図面作成者はつねに計算しておかなくてはいけません。
一般的に、時短と品質はトレードオフの関係にあるといえます。
高品質にこだわればその分時間を犠牲にすることになり、逆に短時間で描こうと思えばある程度品質は後回しになるのが必然だからです。
では、キャリアが長くなるにつれ、時短重視傾向より品質重視傾向が強くなるのはなぜでしょうか。
それは、年々図面を描く速度が(様々な工夫と年月に比例する熟達によって)速くなり、時短を意識せずとも一定の速度以上で図面を描くスキルが身につくことが原因の一つと考えられます。
そして、かつては時間短縮に向けられていた意識が、図面の内容や表現などの品質向上の要素に向けられると同時に、描くのが速くなった分、それらのために時間を割けるようになるのでしょう。

なお、前回もちょっとお話しましたが、行きすぎた時短偏重主義を生むのは、基本的には環境が原因だとわたしは考えています。
とにかく数をこなさなければいけない環境では、品質など問うているヒマもなく次の図面を描かなくては間に合いません。
このような環境にいれば、「少々雑になってもいい」という考えにつながるのも不思議ではありません。
また、「特許図面なんて適当でいい、雑でいい」と考える人が多く集まる環境というのが、特許事務所をはじめとして実は結構あるんです。
こういった、図面の重要性について無理解な現場にいる場合、「少々雑になったところで誰にも指摘されないから、品質にこだわっても意味がない、だったら雑でいい、短時間で描く方がいい」という考え方につながります。
このような環境では、優秀な図面作成者も十把一絡げに扱われて正しい評価がなされず、品質の問われない流れ作業の連続でモチベーションを低下させてしまう可能性だってあります。
図面作成者にとっては、辛い環境といえるかもしれませんね…。

(6-6-4)図面を速く描くことも大切だが、品質とのバランスを考えて、ある程度時間をかけることもある

6-6-4

さーて、最後の設問です。
この設問ではですね、「時短と品質、どちらを重視するかはむずしい問題だけれど、結局はケースバイケースで考えるべきだし、要はバランスだよ!そうだろ、みんな!」と言いたかったわけです(だんだん雑)。
そんなわたしの魂の底からの叫びに対し、声の大小はあれど「いえー!」とレスポンスしてくれた方が全体の八割超。
うん、よし、満足!

と、次第にヤケクソ化してきた(疲れた)ところで、もうひとつ(まだ終わらなーい)。

(7)特許図面作成の効率化や、図面の品質向上のために行っている工夫

アンケートの最後に、「特許図面作成の効率化や、図面の品質向上のために行っている工夫」について記載していただきました。
この設問は自由回答です。最も多かったご回答はこちら。

(7-1)よく使用する図面要素の保存、登録
「電気回路記号、引き出し線等はシンボル登録して使用」
「引出し線、符号、矢印、破線、フローチャートはテンプレートに保存し、シンボル登録もしている」
「普段使用頻度の高いデータはライブラリー化し、作図者全員が使えるようにしている」など

このように、よく使う図面要素は、保存や登録をして使うという声が最も多かったです。
わたしも、十数年使っている年季の入ったライブラリーがありますよ〜。

(7-2)過去の案件の流用
「類似図面の使い回し」
「同じ様な図面は、前回のデータを流用して作業する」
「汎用品、機械要素等の図面は保存しておき、他の案件に流用する」など

同様に多かったのが、過去に描いた図面を流用するという回答でした。
ちなみに、わたしの最近のテーマは、いかにして過去案件をすばやく探せるようになるか、です。
長年描いていると、むかーし描いた似たような図面がどこにあるのか、埋もれてしまって見つけるのが大変になるんですよね。
サムネイル画像と整理番号のほか、キーワードなどを関連付けて検索できるような何かが(願わくば無料で)あったらいいですが…、どなたか良いアイディアがあったら教えてください。

(7-3)フリー素材の利用
「フリーで公開されているCADパーツデータ(2D、3D)をDLしておいて使用している」
「フリーの線画素材も利用する」

このように、フリー素材を利用するという声も上がりました。
ただし、商用OKかなど、利用規約は必ず厳重に確認しておく必要がありますので、そこは十分にお気をつけください。

(7-4)その他の少数回答
「製図ソフトのカスタマイズや、自作プログラムの利用により、効率的な描き方を工夫している」
「スクリプト、ショートカットを駆使し短時間で作図する」
「フリーソフトで印刷スピードアップ」
「最近は、材料毎のハッチングを積極的に使わない方向が有りますので、ハッチングの種類を用意している」
「複雑なCG画像などでの依頼があり、省略したトレースが可能な場合は、LEDトレース台で手書きトレースの後にCADで清書トレースした方が効率が良い場合があります」
「写真出願の際に綺麗なモノクロ/グレーに変換するためにPhotoshopでの色加工にこだわっている」
「所内ローカルルールであるIllustratorレイヤーを登録したファイルを開いて作図する」
「積極的に明細書担当とコミュニケーションをとり、彼らが依頼図で表せていない部分をフォローしたりより最適な表現に調整したりする」
「特許図面のイロハは文書化し、作図者全員に周知徹底する」
「下絵の時点で符号を全然つけないで依頼してくる明細書担当者の図面でも、過去の図面流用などで符号が残ってる場合はこっそり隠しレイヤーで符号と引き出し線をそのまま残しておいたりします」

と、現場ならではの様々な工夫をお寄せいただきました。
このような声をもっともっとたくさん収集したいものです。


と、いうわけで、これにてアンケートのご報告を終わります。
当初の想定に反して、おっそろしく長いアンケート報告となってしまいましたが、なかなかこれまで皆さんの考えを聞く機会はなかったため、個人的にとても興味深く、そして面白いアンケート調査になりました。
このアンケート結果から、何かひとつでも皆さまの心に残るもの、役立つもの、考えさせるものを残せたら、とてもうれしく思います。

それでは、また!

【特許図面の作成に関するアンケート】結果のご報告〔4〕

先月から募集していた『特許図面の作成に関するアンケート』の結果報告です。
思ったより長くなってしまってちょっと焦りつつ、四回目の今日は、特許図面作成者の皆さんが普段どのような考えで図面を作成しているのかを探る、意識調査の結果を報告します。

(6)意識調査
ここでは、回答者の皆さんに、設問に挙げた様々な行動や考えについて、普段の自分にどのくらい当てはまるかを答えてもらいました。

(6-1)依頼された下図に忠実であれば良く、図面の正確性や製図法に沿っているか等は考える必要性がない
6-1


(6-2)依頼された下図とできるだけ同じものを描くようにする
6-2


(6-1)、(6-2)は、下図にどれだけ忠実な図面を描くか、ということを探る設問です。
上記のグラフによれば、『若手+新人』層よりも、『ベテラン+中堅』層の方が、下図に忠実でなければならない、という縛りが少ないようです。
これはなぜでしょうか。

図面作成者に特許図面を依頼する「明細書作成者」の立場から言うと、
クライアントからいただいている下図に従わないということは、一歩間違えると、クライアントにその意を汲まない印象を与えたり、まるで「図面がヘンです」と上から物申しているようなイヤ〜な感じがするため、下図を安易に改変することはあまり好ましくありません(もちろん、人や場合にもよりますが)。
ですので、下図通りに描かないということは、基本的に、そうする根拠(このままでは分かりにくい、誤りがある、雑すぎる、など)があって初めて成り立つことです。
ここで、キャリアが長くなるにつれて下図への忠実度合いが下がる理由は、経験値によって上述のような下図を修正すべき根拠に気づきやすくなることが挙げられると思います。
また、(機械分野の図面のように)図面の正確性を期する場合は、完成した図面と下図とが異なっても許容されやすいことも重要です(下図に忠実に描くことよりも、正確性の追求に重きが置かれるためです)。
機械分野の図面は、正確性が求められると同時に難易度が一般的に高めであり、そのような図面はキャリアの長い図面担当者に回ることが多いですから、その分『ベテラン+中堅』層の下図への忠実度合いが下がるのかもしれません。
さらに、後述の設問(6-6参照)に出てくるように、キャリアが長くなるにつれて明細書担当者に対して直接下図について指摘(ダメ出しなど)ができるようになることも関係しているかもしれません。

一方で、下図に忠実であるか否かは、個人の意思だけでなく、環境によっても大きく変わると思います。
正確性や見た目がどうのと考えるヒマがないくらい忙しく、早く仕上げないと仕事が終わらない!という職場もありますし、「何も考えなくて良いから、下図通り仕上げてほしい」という明細書作成者が多い職場もあります。
また、明細書作成者との距離が遠く、下図に関して相談ができないため、結果的に盲目的に下図に従わざるを得ない職場もあるでしょう。
ただ、そんな環境でも、考えたところで無駄だとあきらめずに、「これはもっとこう描いた方がいいのでは?」という気づきだけは大切にしてほしいと思います。
いつか環境が変わったようなとき、そういう気づきはとても重要になるはずです。

(6-3)他の図面作成者よりも、美しい図面を描きたい
6-3


ちょっと変わった質問ですが、見た目上の美しさにどの程度こだわるかということを尋ねたかった質問です。
「当てはまる」、「やや当てはまる」が8割ほどを占めており、これはキャリアによってそれほど大きな差はありませんでした。
なお、これはわたしの個人的意見ですが、図面の見た目上の美しさはかなり重要だと思っています。
理由は単純で、出願人や明細書担当者などによる図面の評価の判断基準は、見た目の印象の要素がかなり大きいからです。
つまり、出願人や明細書担当者は、図面描きが見るような目線で図面を見ているわけではなく、パッと見で「イイ感じ」か「イマイチ」か判断している人も一定数いるということです(もっとちゃんと図面を見ろよ、と言いたくもなりますが…)。
よく「引出線だとか符号だとかは、分かるようにさえ描いてあれば、見た目なんか何でもいいんだよ」なんて話を耳にしますが、上記のように、全体のパッと見の印象が図面の評価を大きく左右する以上、本当に何でもいいということはなく、やはり綺麗に描いておいて損はないとわたしは思います。

(6-4)後々の修正や転用に対応しやすいよう、図面を描く際には工夫をする
6-4

こちらも、キャリア関係なくほぼ全体が、「当てはまる」、「やや当てはまる」と回答しています。
ですが、『ベテラン+中堅』層の方が、「当てはまる」と回答している割合が圧倒的に高く、回答に自信を感じますね。
ちなみに、実はこの設問、「当てはまる」、「やや当てはまる」と回答する方がこんなに沢山いるなんて、わたしはまったく予想していませんでした。
てっきり、「後々どんな修正がくるかも分からないのに、工夫なんてやりようがねーよ、バーカバーカ」と言われるかと思っていましたよ…いやあ、よかった…(ドキドキ)。
具体的に、修正や転用のためにどのような工夫をしているのか、非常に気になるところですね。
(…これも聞けばよかったなあ。)

(6-5)特許図面は適当でもいいので、あまり細かいことは気にせず描く
6-5

各層とも「当てはまらない」「あまり当てはまらない」が6〜8割を占めている一方で、「やや当てはまる」という回答も2割近くあります。
分かる、分かるけれども、図面描きとしては少しさみしい、と言いたくなる結果です。
特許事務所に所属していると、たびたび耳にするこの「特許図面は適当でもいい」の言葉。
確かに、図面の内容や発明の分野によっては適当でも済むものもあります。
例えば、制御系やIT系などの発明は、図面が多少いい加減でも許されるところがあると思いますし、ブロック図なんて適当に描いても真剣に描いても、誤字脱字や図内容の誤りさえなければ、特に問題にはなりません(もちろん問題にならないというだけで、見た目による評価はひそかに下がっているかもしれませんが)。
このように、適当で済む図面がある一方で、(何度も言いますが)機械分野の図面など、適当では済まない図面も確かにあります。

ただ、図面描き自身が「特許図面は適当でいい」と考えるのは、下図への忠実度合いと一緒で、本人の意思ばかりではなく、環境の影響も大きいんですよね。
図面の依頼者のほとんどが「特許図面は適当でいい」と考えていたらその考えが伝染するのは当然ですし、依頼図の8割をブロック図やフローチャートが占めていたら、適当でいいという考えも合理的といえるでしょう。
(とはいえ、やっぱり図面描きとしてはさみしいなー、と個人的には思っています。)

(6-6)図面から発明を把握する努力をし、図面の内容に誤りがあれば、修正したり指摘したりする
6-6

(6-5)の設問と比べると、一転してアグレッシブな設問です。
期待したとおり、『ベテラン+中堅』層では、「当てはまる」が75%、残りの25%は「やや当てはまる」と、全員が「修正・指摘をする」という非常に頼もしい結果になりました。
一方、『若手+新人』層では、「当てはまる」と「やや当てはまる」が多数派(合わせて70%)ながら、『ベテラン+中堅』層に比べると後退し、さらに「どちらともいえない」「あまり当てはまらない」という回答もみられます。
設問中には、「修正」だけでなく「指摘」という言葉もありますので、明細書書きに向かって「これはおかしいですよ」と指摘しなければいけないと考えると、少しハードルが高く感じられるのかもしれません。
ここに、『若手+新人』層の躊躇と不安が読み取れるような気がします。
そうだとしても、このグラフ6-6の『ベテラン+中堅』層の結果をみれば、十年も経つと皆が当たり前のように「修正・指摘」ができるようになっているわけですから、若手や新人の皆さんも心配せずに、どんどん意見を言えるようになってほしいと思います。

と、そんなところで、今回のご報告は終わりとします。
ずいぶん長くなってきました。次回あたりですべて出しきりたいところです…(自信はない)。
では、また次回お会いしましょう!

なお、今回のアンケートに関して、ご感想やご意見などがありましたら、お気軽にコメント欄にお寄せください。
どうぞよろしくお願いいたします。


***

ついでと言ってはなんですが、ちょっとだけ宣伝。
10月6日に、「特許図面作成講座(実践篇)」と銘打って、特許図面の作成実習を行います。

普段、特許図面作成者の皆さんは、下図を依頼されて図面を描くお仕事をされることが多いと思いますが、
今回は、その逆、つまり、発明の内容を聞き、自分なりに考えて必要な図面を描いてみる、という流れでセミナーを行います。
このように、いつもと違う流れで図面を描くことで、普段自分で描いている特許図面が表す意味を理解しやすくなったり、図面に表れる重要なポイントを見つけやすくなったりと、様々な気づきがあると思います。
ご興味のある方はぜひ、ご参加ください。
ちなみに、セミナー講師は不肖ながらわたくしが務めさせていただきます!

場所は、いつもの国立オリンピック記念青少年総合センター。
ただし、いつものセンター棟ではなく、「カルチャー棟」という別の建物になりますので、ご注意くださいね。
それでは、また次回!

181006

特許図面作成講座(実践篇)を開催します。

今年の1月に行われた、「特許図面作成講座(初級編)」に引き続き、今回は「特許図面作成講座(実践篇)」が開催されます。


181006

【特許図面作成講座(実践篇) 〜もう一歩先の、特許図面作成者になろう〜 】
日程:2018年10月6日(土)  13:00-17:00
会場:国立オリンピック記念青少年総合センター東京都渋谷区代々木神園町3-1
詳細:http://www.javc.gr.jp/katsudou/181006.html


本セミナーは、トレースだけの「受け身の特許図面作成」ではなく、 自ら提案できる 「提案型の特許図面作成」を目指そう!というコンセプトのセミナーです。

講座では、講師が「発明者(または明細書作成者)の立場になり、受講生の皆さんに発明のポイントを説明し、受講生の皆さんに自由にラフスケッチ(ポンチ絵) を描いていただきます。実務に近いスタイルで行う作図実習を通して 「提案型の特許図面作成」 の基礎を学びます。
作図実習と言っても、用意していただくのは鉛筆、消しゴムくらいで、絵も上手くなくてはいけない、と言うことはありません。また、経験が浅い方でも、受講できる内容になっています。もちろん弁理士の方にも、おすすめの講座です。


このような実践的な特許図面セミナーの開催は、他にはほぼ無いと思われます。この機会をお見逃しなく。

※なお、本講座は今年の一月に行った「特許図面作成講座(初級篇)」 の応用講座ですが、「特許図面作成講座(初級篇)」に参加されなかった方 でも受講可能な内容となっております。お気軽にご参加ください。

[こちから前回のセミナーの様子が見れます。]
http://javc.doorblog.jp/archives/1890924.html


特許図面の講座ではありますが、「物の形状・構造」などを分かりやすくイラスト化する作業は、テクニカルイラストレーションそのものです。日頃、取説のイラストを描いている方であっても、学べる点は多くあると思います。分野が違うからとは思わず、お気軽にご参加ください。

技能検定対策セミナーを行いまいました。

技能検定対策セミナーを行いまいました。@IMG_3453


今回は手書きの人は一切おらず、全員CADでの参加でした。希望された、課題の級は1級、2級、3級とすべてそろっていました。


また、参加された方のCADソフトは、Illustratorや3DCADなど、みなそれぞれでした。私たちもすべてのソフトの操作を把握しているわけではないので、具体的な操作まで指導するのは困難です。ただ、基本的なテクニカルイラストレーション技能検定の注意点などは、お伝えできます。


3級に限って、私の感想なりを少し書きます。出題した3級の模擬問題です。数値は隠しています。@IMG_3447
3級の課題図には、製図記号が含まれています。直径、半径、面取り、球など基本的なものです。機械製図を学んだことがことがる人には、なんてことのないものですが、特許図面の事務として作図に関わるようになった方などには、ちょっと戸惑ってしまうかもしれません。

機械製図の本や、日本ビジュアルコミュニケーション協会で販売している、テキストに解説があるので、そのような本を読んでいただければと思います。



@IMG_3454
これが解答例。試験の指示に「等測図、等測投影図」どちらかで描くように指示があるので、この違いはしっかり理解しておくようにして下さい。すべて描けていてもこれを間違えると、ほぼ確実に不合格になります。



今回の課題が、講義の時間に描き切れていた人は、来年1月に実施される試験まで十分間に合うレベルにあると思います。また、講義の時間中にすべて描けなくても、ある程度の形まで描けた方でも、試験は来年の一月なので、休日にちょくちょく作図の練習をやれば、合格するレベルまでに十分なると思います。あきらめずに取り組んで欲しいと思います。
@IMG_3452


ただ、時間は気にせず描いてもらったので、試験が近くなったら、時間内に描き切ることを意識する必要はあります。

どのソフトにも言えますが、ショートカットは、必ず使用したほうがいいでしょう。ただ、漠然と描くのではなく、どうしたらもっと効率的に描けるのかを考えながら描いた方がいいでしょう。図面を描いているときっと、「面倒だなこの作業、」って場面が必ずあるはずです。その時は、一旦立ち止まって操作の見直しをするのがいいと思います。


3級の内容であれば、二次元でも十分作図していけるものですが、3DCADのモデリングの試験としても最適だと思います。

三次元CADでモデリングする場合は、モデリングすれば合格というわけではありません。テクニカルイラストレーション技能検定では、指示された通り、基準線を入れる、二級であれば部品番号を入れるなどの作業もしなくてはなりません。

三次元CADで受験する方は、提出できる内容にするために、CADやIllustratorを使うことまで、考えておくようにしてください。


テクニカルイラストレーション技能検定について不明な点がありましたら、このブログのコメント欄でもいいですし、日本ビジュアルコミュニケーション協会の問い合わせから、質問していただいても構いません。
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