先月から募集していた『特許図面の作成に関するアンケート』、前回から順次結果をご報告させていただいています。
今回のテーマは、3D CADと、現物からの作図についてです。

(3)3D CAD(つづき)
次に、3D CAD使用者に、使用している3D CADを聞いてみました(グラフ3-5)。

3-5

最も多かったのが、Design Spark Mechanical(デザインスパークメカニカル)です。
Design Spark Mechanical(デザインスパークメカニカル)は、粘土をこねるように感覚的なモデリングが特徴的な、無償の3D CAD。
3Dのミラーコピーができない、ロフトなど複雑なソリッドモデリングは苦手、断面図は2D図面に出力できないなどなど、無償なので「うーん」な点ももちろんありますが、それを補って余りある使いやすさと分かりやすさ。
わたしの知人は、ことあるごとに「デザインスパークメカニカルに慣れると、もう他の3D CADを使いたくなくなる」と言っています。
これにはわたしも同感。
「粘土をこねるように扱える」ってほかの3D CADの謳い文句でも見かけたことがありますが、使ってみるとデザインスパークメカニカルの方がしっくりくる!
ただ残念なのは、扱えるファイル形式が少なく、特にSTEPファイルが読み取り専用で編集はできないことでしょうか(ただし、2D図面を出力することは可能です。また、STEPファイルとIGESファイルの編集が可能になる拡張モジュールも販売されています)。

二位のFree CAD(フリーキャド)は、オープンソースの無償3D CADです。
様々な用途に特化したワークベンチを使い分けるのが特徴で、無償にしては高度かつ多種多様な機能を備えています。
しかし、その分ユーザーインターフェースが複雑になっていて、慣れるまでには少し時間がかかるかもしれません。
また、IGESやSTEPのほか、STLやOBJなど、多数のファイル形式をサポートしているのも大きな特長です。
先ほどのデザインスパークメカニカルでは編集できないSTEPファイルの場合、わたしはこちらのフリーキャドを利用しています。

次いで、Solid Works(ソリッドワークス)、Inbentor(インベンター)と、今度は有償の3D CADがつづきます。その他としては、Sketch Up(スケッチアップ)、Creo Elements/Direct Modeling Express(クレオエレメンツ)、Fusion 360(フュージョンスリーシックスティ)などが挙がりました。
一方、「使用したことはないが、今後使用の予定がある」と回答された方が、今後使用を予定している3D CADとしては、Free CAD(フリーキャド)やRhinoceros(ライノセラス)が挙がっていました。
今後、特許図面作成に3D CADを使用したいと考える方は、先ほどの3D CAD使用者のグラフに挙がったソフトも参考にご検討されてみるのも良いかと思います。

興味深かったのは、3D CADを使用している方の半数以上(67%)が、複数の3D CADを併用している、ということです。
また、複数の3D CADを併用している方のうち、「有償の3D CADがある環境でも無償の3D CADを併用している」というケースが56%もありました。
これには、「一方の3D CADでできないことを他方の3D CADで補うため」や「多様なファイル形式に対応するため」などの理由が考えられますね。

(4)現物からの作図
次に、クライアントから受け取った現物(実際の発明品や、それに近い形状/構造の物など)から図面を起すことがあるか否かを質問しました(グラフ4-1)。
ほとんどの方が、受け取った現物から作図した経験があることが分かります。

4-1

では、どのような方法を用いて現物から作図をしているのでしょうか。
「写真を撮ってトレースする」、
「寸法を測って寸法通りに作図する」、
「寸法を測って3Dモデリングし、図面を出力する」、
「写真は撮らず、寸法を測らずに、見た目をスケッチし図面化する」
という4つの方法について、どれくらいの頻度で行うか尋ねてみました。

図面の正確性を重視する場合、「寸法を測って3Dモデリングし、図面を出力する」や「寸法を測って寸法通りに作図する」の頻度が高くなると思います。(ただし、3Dモデリングするには、3D CADが必要になります。)
「写真を撮ってトレースする」は、寸法値を測りにくいもの(例えば、複雑なRを持つペットボトルなど)を描く場合を除いて、どちらかといえば正確性よりも時間短縮を図る場合にとる手段といえます。
「写真は撮らず、寸法を測らずに、見た目をスケッチし図面化する」は、美術的なデッサンの手法としては一般的ですが、やはり図面化の手段としては正確性が低く、時間短縮をより重視した方法といえます。

4-2

グラフ4-2は、1が最も低頻度で4が最も高頻度を表しています。
つまり、全体の平均では、「写真を撮ってトレースする」頻度が最も高く(平均3.0)、「寸法を測って寸法通りに作図する」頻度がそれに次いで高い(平均2.5)ことになります。「寸法を測って3Dモデリングし、図面を出力する」、「写真は撮らず、寸法を測らずに、見た目をスケッチし図面化する」の頻度は低く、それぞれ平均1.7でした。
全体としては、正確性も時間短縮も「ほどほどに重視している」という印象ですね。歯切れの悪い表現ですが。
「寸法を測って3Dモデリングし、図面を出力する」に関しては、全体の3D CAD使用率が45%であり、かつ、3D CAD使用者のうち自分で一から3Dモデリングを行う方が63%という状況を考えると、妥当な数字です。

ここで、『ベテラン+中堅』層と、『若手+新人』層で、作図の仕方に違いがあるか、見てみます。

4-3-4

『若手+新人』層と比較すると、『ベテラン+中堅』層では、「寸法を測って寸法通りに作図する」頻度が上昇していることが分かります。
『ベテラン+中堅』層の方が正確性を意識している、というところでしょうか。

では、今度は、現物からの作図が『頻繁にある』と回答した層と、『ときどきある』と回答した層を比較してみます。

4-5-6

今度ははっきりとした違いがグラフに表れています。
『ときどきある』層は、先ほどの『若手+新人』層と同じように、「写真を撮ってトレースする」頻度が高めで、「寸法を測って寸法通りに作図する」頻度は低くなっています。
一方、『頻繁にある』層では、「写真を撮ってトレースする」頻度も高め(平均3.2)ですが、それ以上に「寸法を測って寸法通りに作図する」頻度が他に比べて非常に高くなっている(平均3.6)ことが分かります。
その一方で、「見た目をスケッチし図面化する」は平均1.4と他より低いことがわかります。
また、「寸法を測って3Dモデリングし、図面を出力する」も平均2.0と、他と比べて少々高くなっています。
これらを総合すると、現物からの作図が『頻繁にある』層は、正確に作図する意識が高い、あるいは正確な作図が要請される環境にいる、といえます。

基本的に、現物から図面を描く場合、その発明はほとんどが機械系に属する発明(=物の形状や構造に関する発明)といえると思います(もちろん、例外もあると思いますが)。
一月の特許図面セミナーでも少しお話しましたが、機械分野は図面の重要性が他の分野と比較して圧倒的に高いです。
なぜかというと、機械分野の発明は技術的特徴を視覚的に表現できるため、図面が明細書を補う度合いが非常に高いからです。
つまり、現物からの作図を頻繁に行う環境とは、機械分野の発明が高頻度に発生する環境といえますので、そもそも図面の正確性が高く要請されており、寸法を計測して描く正確な作図が増えるのではないかと推測されます。
同じ特許図面制作の現場でも、これだけの違いが現れるとはおもしろいですね。


さて、そんなところで、今回のご報告は終わりとします。
次回は、図面を描く際に重要視していることなどについてご報告させていただきます!

なお、今回のアンケートに関して、ご感想やご意見などがありましたら、お気軽にコメント欄にお寄せください。
どうぞよろしくお願いいたします。