まだやんのかーい!という声が、どこかから聞こえてきそうですが、すみません、もう一つだけ。
今回のアンケートにお寄せいただいた、ある方のご意見を紹介させていただきます。

「特許事務所勤務です。
正直品質について事務所からなにか言われたことは一度もありません。
明細書担当者は仕上がりを気にしません。
なのでただ言われたまま作図をしているとモチベーションが維持できません。
クライアントや審査官を意識して作業をし、指示から大きく外れない程度に「色」をつけることでやりがいのある作業となり
品質向上につながっているのではないかと思って日々作業しています。」


このご回答を見たとき、わたしはチクッと心になにか刺さるような、何ともいえない痛みを感じました。

いや、チクッというより、グッサリきました。
こう、893が持ってるドスでお腹グッサリ、血がドバー、みたいな。
なぜでしょう。
それは記憶をたどると、似たような環境で、同じやるせなさを感じた経験があるからなんです。

わたしは、「仕事」というものは、個人が収入を得るための手段であると同時に、その個人が属する社会に参加し、貢献することで社会とのつながりを実感し、生きる喜びを得るものだとも考えています。
ですから、どうせ図面を描くのなら、役に立つ、誰かを喜ばせる図面を描きたいと思っています。
あなたに任せて良かった、またお願いするよ!と言ってもらえるような図面です。
だから、JAVCと関わる以前にもできるだけ自分で特許図面に関する情報を探し、描き方を模索し、早く正確かつ綺麗に描くための努力をしてきたつもりです。
ところが、
「特許図面だから、ササッとテキトーにやってよ」「雑でもいいから」「なんとなく分かる程度に描いてくれればいいよ」
そんな声を耳にすると、なんのための努力だよ、そんなの必要とされてないし、無駄じゃないか、と幾度となく心が折れそうになったもんです。

でも、その後の経験の中で、次第に、
特許図面は雑で良いわけがないし、「図面がすべて」といえるほど図面が大切な案件もあるし、特許図面は「テキトー(=いいかげん)」ではなく「適当(=ほどよいこと)」でなければならない、ということを学びました。
上のご意見を書かれた方の言葉を見る限り、様々な工夫を重ねたことに対して「品質向上している実感」はまだ湧いていないのかな?と思いますが、その努力はいつか必ず実を結ぶときがくると、わたしは確信しています。

わたしがJAVCで特許図面に関するさまざまな活動を行っているのは、いまだにある現場の無理解(「特許図面はテキトーでいい」に代表される無理解)に対して、
さらに、その無理解に阻まれてどのような働き方をすべきか迷っている方々に対して、何ができるだろうかと考えた末の、答えのひとつでもあります。
ごくごく小さな活動にすぎませんが、まずは横のつながりを作り、有益な情報は互いに共有し、皆でステップアップしていくこと。
さらに、努力してステップアップした人が描く図面の品質のよさに触れてもらって、現場を少しずつ、少しずつ、変えていくこと。
そして、そんな良質な図面を描ける図面描きが、正当に高く評価される現場を増やしていくこと。
単なる理想論といえばそうかもしれませんし、実際に叶う夢なのかは分かりませんが、どんなことでもやってみなければ答えは出ません。
これからもあきらめずに、淡々と、粘り強くがんばっていきます。


今回、アンケートのご回答を通して、たくさんの特許図面作成者の皆さんと会話をさせていただいたような、そんな充実感に包まれました。
特に謝礼もないというのに(ごめんなさい)長いアンケートにご協力いただいた特許図面作成者の皆さま、心より御礼申し上げます。
実は、今回の結果を活かして、また新しい企画を考え中です。
どうぞ引き続きお付き合いください!

***

ここで、またまた宣伝(すんまへん)。
10月6日に、「特許図面作成講座(実践篇)」と銘打って、特許図面の作成実習を行います。
どのような内容かというと、身近な発明の特許図面を、自分の力で描いてみる、というセミナーです(前回の初級編では、ダブルクリップを取り上げて、皆さんに図面を描いてもらいました)。

特許図面作成者は普段、依頼された下図を特許図面に仕上げるお仕事をされているものと思います。
自分で特許図面の内容を考えることは、あまり経験がないという方、中には全く経験がなく、それをする意味もよく分からない、という方もいらっしゃるでしょう。
では、どうしてこのような形式のセミナーを行うのか、というと。

わたしは以前、とある特許事務所の明細書担当者の方に、こんなことを言われたことがあります。
「きみたちが描いているのは絵やイラストじゃない、技術の表現なんだ。」

そう。
特許図面とは、発明の技術的特徴を、分かりやすく人に伝達するための(広義の)テクニカルイラストレーションなんです。
身近な発明を自分の力で特許図面にするということは、受講生の皆さん自身が思う発明の技術的特徴を、図面を使って(人に伝わるように)表現するということです。
ここには、特許図面の本質が山ほど詰まっています
ですので、このような経験を積むことで、普段自分で描いている特許図面が表す意味を理解しやすくなったり、図面に表れる重要なポイントを見つけやすくなったりと、様々な気づきがあると思います。
ご興味のある方はぜひ、ご参加ください。

それでは、また!