テクニカルイラストレーション技能士のブログ

日本ビジュアルコミュニケーション協会の会員が綴る、日常の出来事です。仕事関係が多いかな???

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技能検定試験の表彰式に参加してきました!

先日のセミナーがやっと終了して、肩の重荷がなくなり、
すっかり上機嫌な日々を送っていた10月のとある日、自宅のポストに一通の見慣れない封書が入っていました。

差出人は、東京都職業能力開発協会…?

ということは、今年のテクニカルイラストレーション技能士試験の宣伝かな?
ん、今さら?
いやいや、そんな訳ないじゃん、もう願書の提出が始まってるはずだし。

などと、ぼんやり思いつつ、封筒を開いたところ…

(ゴゴゴゴゴゴゴゴ……)平成29年度後期技能検定試験において、あなたは優秀な成績で合格されましたので、技能検定試験成績優秀者として、東京都職業能力開発協会長賞を授与することと致しました。」

ギィヤーーー!!イヤァーーーー!!!!
(注:うれしさを、あふれ出る驚愕で包んだ声)

たかだか三級ごときでそんなに喜んでどうする、と言われてしまいそうですが、
テクニカルイラストレーション技能士三級試験には、自分なりにヒィヒィ言わされた記憶もあったので、それはもう素直に狂喜乱舞いたしました(三級の舞い)。
ありがたや、ありがたや。

さっそく、JAVCの事務局に連絡してみると。
事務局にもすでに直接職業能力開発協会から今回の表彰について連絡があったとのことですが、事務局のTさんからはソッコー「参加しませーん」とのキッパリしたお返事。

そっけねーな!!!! あーたの弟子みたいなもんなのによぉー!!(涙)
つめたい、つめたすぎる協会だ。凍てつく世間の風が目にしみる…(注:この行のみフィクションです。以下、ノンフィクションでお送りします)。

というわけで。
平日昼間にお仕事を抜け出して、ひとりホイホイと表彰式に参加しに行ってきました。

TI3会場

なんだか格式高い感じですね。
さまざまな職種の技能士が一堂に会して、みなさん誇らしげです。
この時点で気づいたんですが、参加者の中でスーツを着ていないのは、わたしのほかに二人か三人くらい…(しかもわたし以外は皆さん年若い方…)。
やべー、その発想がなかった(社会人失格)。
たまたま、本当に偶然この日は、タイトスカートとブラウスという格好だったのでさほど浮かずに済みましたが、夏だったら超テキトーなTシャツにロンスカみたいな格好で浮きまくっていた可能性がありますね。いかんいかん。
というか、ジャケットくらいは買っておかないと(そもそも持っていなかった)。
ちなみに、十代とおぼしき学生さんもたくさんいらっしゃいましたが、みなさん制服で参加されていましたよ。

この後、ひとりひとり名前を呼ばれて、賞状を手渡されました。さらに、記念品も。

TI3賞状

箱の中身はなんだろな♪(皆さんの今後の楽しみのためにも、ナイショにしておきます!)

さらに賞状の授与が終わったあとには、壇上に整列しての写真撮影もありました。
公式のカメラマンのほか、(恐らく)さまざまな学校、関連団体(JAVCよりもあたたかい団体かしら)の方たちからも、いろんなところからカメラを向けられます。
その数、二十人くらい。よく見ると、携帯とかタブレットをかまえている人も結構います。
しばらくの間、あっちからもこっちからも、パシャパシャと撮られまくって、まるで有名人。
これまでの人生で、こんなに大勢から一度にカメラを向けられたことがなかったので、びびって若干顔が引きつりました。
変な顔で写ってたら絶対そのせいだよね!(元の顔面レベルは置いといて)

そんなこんなで、ほんの一時間程度でしたが、とてもうれしい経験になりました。
これからテクニカルイラストレーション技能士試験を受ける皆さん、どうせやるからには、気合を入れて頂点を目指しましょう!
そして表彰されましょう!
君ならできる!!

がんばってください!


特許図面作成講座(実践篇)へのご参加、どうもありがとうございました!

三連休初日、台風がくるのか来ないのか大分ヤキモキさせられましたが、無事に「特許図面作成講座(実践篇)」を行うことができました。
予想以上に天候は良好で、夜には台風の影響で強くなると思われた風もほとんど気にならず、帰りは安心して皆さんを見送ることができて本当に良かったです。

さて、今回は、特許図面作成者の皆さんご自身で特許図面の内容を考え、
描いてみることがメインの講座でした。
東京での開催にも関わらず、兵庫や大阪など遠方の方にも足を運んでいただきました。
また、中には明細書作成をされている方、弁理士の方もいらっしゃったんですよね(おかげさまで、それはそれはもう、大緊張しました…)。

今回の作図課題は、二つ。
前回同様、機械系の発明(物の形状や構成に特徴がある発明)の図面ですが、具体的には、腕時計のばね棒と、自立するしゃもじの図面でした。
実際に受講生の方に描いていただいた図面の一部を、ご覧ください。

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うおー、すごい!!
さすがプロ、と唸りたくなる出来ですね〜。
この図面は、特許図面作成暦ウン十年の、ベテラン中の大ベテランの方が今回のセミナー中、あっという間にサラサラサラ〜と作成された図面です。
課題中、符号の指定は一切していないのですが、経験を積まれると「大体この辺りに符号が入りそうだな」というのが感覚的に分かるのでしょう。
実にいいところに符号が入っています。

「こんなすごいの、自分には描けない!」と思われた方、ご安心ください、全然大丈夫ですよ。
ここまで描けるのは、やはり経験の力。
ですので、一歩一歩、ゆっくり確実に経験を積んでともに進んでいきましょう。

当日お渡しした作図例は、このような華麗な図面ではなかったと思いますが(斜視図の数が少なく、正投影図が多いと、華麗さはやはり控えめですかね…)、それでも十分合格点に到達しているものです。
要は、押さえるべきポイントをきっちり押さえているか否かが大切、ということです。
(そういう意味では、大多数の受講生の皆さんが作図例に近い図面をきちんと描いていらっしゃいました。お見事です。)

なお、最近発行された公開公報で、今回皆さんに描いてもらった時計のばね棒とちょっと似ているものがありました(特開2018-38470号)。
発明の課題も特徴も異なるので、図面の内容も当然異なっていますが、
今回皆さんが描いた図面やお渡しした作図例と、作図の発想自体が近いことが分かるのではないかと思います。
興味のある方は、J-PlatPatで検索してみてくださいね。

という訳で、当日、迷ったり悩んだりしつつ沢山図面を描いていただいた受講生の皆さん、本当にどうもありがとうございました。
出題した側のわたしが「!?」と言葉に詰まるような、ご質問やご指摘、発見の数々(「この発明、ここはどうなんですかね」「…ファッ!?」みたいなのが結構あったな(笑))を聞いて、わたし自身も非常に勉強になりました。
こうして皆さんと切磋琢磨して、いつか揃って「ベテラン中の大ベテラン」の称号を得られる日が来るのを夢見て、がんばっていきたいですね!!

ではまた!

【特許図面の作成に関するアンケート】結果のご報告_番外編

まだやんのかーい!という声が、どこかから聞こえてきそうですが、すみません、もう一つだけ。
今回のアンケートにお寄せいただいた、ある方のご意見を紹介させていただきます。

「特許事務所勤務です。
正直品質について事務所からなにか言われたことは一度もありません。
明細書担当者は仕上がりを気にしません。
なのでただ言われたまま作図をしているとモチベーションが維持できません。
クライアントや審査官を意識して作業をし、指示から大きく外れない程度に「色」をつけることでやりがいのある作業となり
品質向上につながっているのではないかと思って日々作業しています。」


このご回答を見たとき、わたしはチクッと心になにか刺さるような、何ともいえない痛みを感じました。

いや、チクッというより、グッサリきました。
こう、893が持ってるドスでお腹グッサリ、血がドバー、みたいな。
なぜでしょう。
それは記憶をたどると、似たような環境で、同じやるせなさを感じた経験があるからなんです。

わたしは、「仕事」というものは、個人が収入を得るための手段であると同時に、その個人が属する社会に参加し、貢献することで社会とのつながりを実感し、生きる喜びを得るものだとも考えています。
ですから、どうせ図面を描くのなら、役に立つ、誰かを喜ばせる図面を描きたいと思っています。
あなたに任せて良かった、またお願いするよ!と言ってもらえるような図面です。
だから、JAVCと関わる以前にもできるだけ自分で特許図面に関する情報を探し、描き方を模索し、早く正確かつ綺麗に描くための努力をしてきたつもりです。
ところが、
「特許図面だから、ササッとテキトーにやってよ」「雑でもいいから」「なんとなく分かる程度に描いてくれればいいよ」
そんな声を耳にすると、なんのための努力だよ、そんなの必要とされてないし、無駄じゃないか、と幾度となく心が折れそうになったもんです。

でも、その後の経験の中で、次第に、
特許図面は雑で良いわけがないし、「図面がすべて」といえるほど図面が大切な案件もあるし、特許図面は「テキトー(=いいかげん)」ではなく「適当(=ほどよいこと)」でなければならない、ということを学びました。
上のご意見を書かれた方の言葉を見る限り、様々な工夫を重ねたことに対して「品質向上している実感」はまだ湧いていないのかな?と思いますが、その努力はいつか必ず実を結ぶときがくると、わたしは確信しています。

わたしがJAVCで特許図面に関するさまざまな活動を行っているのは、いまだにある現場の無理解(「特許図面はテキトーでいい」に代表される無理解)に対して、
さらに、その無理解に阻まれてどのような働き方をすべきか迷っている方々に対して、何ができるだろうかと考えた末の、答えのひとつでもあります。
ごくごく小さな活動にすぎませんが、まずは横のつながりを作り、有益な情報は互いに共有し、皆でステップアップしていくこと。
さらに、努力してステップアップした人が描く図面の品質のよさに触れてもらって、現場を少しずつ、少しずつ、変えていくこと。
そして、そんな良質な図面を描ける図面描きが、正当に高く評価される現場を増やしていくこと。
単なる理想論といえばそうかもしれませんし、実際に叶う夢なのかは分かりませんが、どんなことでもやってみなければ答えは出ません。
これからもあきらめずに、淡々と、粘り強くがんばっていきます。


今回、アンケートのご回答を通して、たくさんの特許図面作成者の皆さんと会話をさせていただいたような、そんな充実感に包まれました。
特に謝礼もないというのに(ごめんなさい)長いアンケートにご協力いただいた特許図面作成者の皆さま、心より御礼申し上げます。
実は、今回の結果を活かして、また新しい企画を考え中です。
どうぞ引き続きお付き合いください!

***

ここで、またまた宣伝(すんまへん)。
10月6日に、「特許図面作成講座(実践篇)」と銘打って、特許図面の作成実習を行います。
どのような内容かというと、身近な発明の特許図面を、自分の力で描いてみる、というセミナーです(前回の初級編では、ダブルクリップを取り上げて、皆さんに図面を描いてもらいました)。

特許図面作成者は普段、依頼された下図を特許図面に仕上げるお仕事をされているものと思います。
自分で特許図面の内容を考えることは、あまり経験がないという方、中には全く経験がなく、それをする意味もよく分からない、という方もいらっしゃるでしょう。
では、どうしてこのような形式のセミナーを行うのか、というと。

わたしは以前、とある特許事務所の明細書担当者の方に、こんなことを言われたことがあります。
「きみたちが描いているのは絵やイラストじゃない、技術の表現なんだ。」

そう。
特許図面とは、発明の技術的特徴を、分かりやすく人に伝達するための(広義の)テクニカルイラストレーションなんです。
身近な発明を自分の力で特許図面にするということは、受講生の皆さん自身が思う発明の技術的特徴を、図面を使って(人に伝わるように)表現するということです。
ここには、特許図面の本質が山ほど詰まっています
ですので、このような経験を積むことで、普段自分で描いている特許図面が表す意味を理解しやすくなったり、図面に表れる重要なポイントを見つけやすくなったりと、様々な気づきがあると思います。
ご興味のある方はぜひ、ご参加ください。

それでは、また!

【特許図面の作成に関するアンケート】結果のご報告〔5〕_完結編

先月から募集していた『特許図面の作成に関するアンケート』の結果報告です。
まさかの大長編と化してきましたよ、ハァハァ…(疲労)。

(6)意識調査(つづき)

最後になりましたが、以下の三つの設問は、品質と時間のどちらを重視する傾向にあるかを問うものです。
一つ一つ、詳しく見ていきましょう。

(6-6-1)細部までこだわって丁寧に描きすぎるのは、時間や手間を無駄にすることになる

6-6-1

この(6-6-1)では、「細部までこだわって丁寧に描きすぎる」という、品質重視への「やや過度な」こだわりに対する反応を見てみました。
その結果、キャリア関係なくほぼ80%が、「当てはまる」「やや当てはまる」という回答となりました。
前回、図面は見た目が大切だという話をしたばかりですが、やはり特許図面は芸術作品ではありませんので、膨大な時間と手間を一図に注ぎ込めるわけではないのが現実です。
したがって、八割以上が、細部にこだわりすぎることを嫌う傾向があるようです。

特許図面作成者というものは、つねに時間と品質のバランスの狭間で、どの程度が「ちょうどいい具合」なのかを見極める必要があるんですよね。
でも、それって意外にサジ加減がむずかしい。
実際、どうでもいいところに(それがどうでもいいところだと気づかず)こだわって時間をかけすぎてしまうなんてことは、実務的にもありがちで、よく聞く話です。
(そして、そういうタイミングで明細書書きに「特許図面なんて適当でいいんだから、ささっと描いてくれる?」なんてイヤミを言われて、いろんな意味でカチンときたりして。)

これは前回のセミナーでもお話しましたが、クライアントも明細書書きも、発明や図面のポイントとなる部分はきっちり図面に描いてほしいと強くこだわりますが、ポイント以外は正直どうでも良いと考える人が多いです(程度の差は、もちろんあります)。
ですので、ポイントなのかポイント以外かを嗅ぎ分けるスキルというのは、特許図面作成者にとって非常に大切です。
丁寧に描く範囲をポイントのみに絞り込み、それ以外はある程度手を緩めることができるからです。
その結果、短時間で品質の良い特許図面を作成することが可能になるというわけです。
では、どうやって嗅ぎ分けるか…、なんて話をここで始めると長くなりますので、それはまたセミナーなどの折にお話ししようと思います。

(6-6-2)図面が少々雑になっても、短時間で仕上げることの方が特許の場合は大切だ

6-6-2

次の(6-6-2)では、「図面が少々雑でもいいから短時間で仕上げる」という、少し行きすぎた時短重視に対する反応をみました。
「少々雑」というのがポイントです。つまり、図面の品質を落としてでも時短を選ぶか、という話です。

『ベテラン+中堅』層は、過半数がこの「時短偏重主義」には賛同していません。
一方で、『若手+新人』層では、「どちらともいえない」を挟んで、賛同派と非賛同派がちょうど睨み合うかのように拮抗する結果となりました。
実は、前々回に結果を報告した(5)の何を重要視するかのアンケートでも、「短時間で描くこと」の『若手+新人』層の平均スコアは4.3であり、『ベテラン+中堅』層の平均スコア3.9を上回っています。
総合すると、『若手+新人』層では品質より時間短縮に重きを置く傾向が『ベテラン+中堅』層よりも強い、という結果になりました。
『若手+新人』層では、時間を短縮することへの肯定感(あるいは、時間をかけることへの拒否感、不安感)が強いのかもしれませんね。

このように、特許図面において「時間短縮」と「品質」、どちらを重視するかは悩ましい問題です。
費用対効果を考え、一定の品質も守りつつ時間というコストをどこまで費やすか、特許図面作成者はつねに計算しておかなくてはいけません。
一般的に、時短と品質はトレードオフの関係にあるといえます。
高品質にこだわればその分時間を犠牲にすることになり、逆に短時間で描こうと思えばある程度品質は後回しになるのが必然だからです。
では、キャリアが長くなるにつれ、時短重視傾向より品質重視傾向が強くなるのはなぜでしょうか。
それは、年々図面を描く速度が(様々な工夫と年月に比例する熟達によって)速くなり、時短を意識せずとも一定の速度以上で図面を描くスキルが身につくことが原因の一つと考えられます。
そして、かつては時間短縮に向けられていた意識が、図面の内容や表現などの品質向上の要素に向けられると同時に、描くのが速くなった分、それらのために時間を割けるようになるのでしょう。

なお、前回もちょっとお話しましたが、行きすぎた時短偏重主義を生むのは、基本的には環境が原因だとわたしは考えています。
とにかく数をこなさなければいけない環境では、品質など問うているヒマもなく次の図面を描かなくては間に合いません。
このような環境にいれば、「少々雑になってもいい」という考えにつながるのも不思議ではありません。
また、「特許図面なんて適当でいい、雑でいい」と考える人が多く集まる環境というのが、特許事務所をはじめとして実は結構あるんです。
こういった、図面の重要性について無理解な現場にいる場合、「少々雑になったところで誰にも指摘されないから、品質にこだわっても意味がない、だったら雑でいい、短時間で描く方がいい」という考え方につながります。
このような環境では、優秀な図面作成者も十把一絡げに扱われて正しい評価がなされず、品質の問われない流れ作業の連続でモチベーションを低下させてしまう可能性だってあります。
図面作成者にとっては、辛い環境といえるかもしれませんね…。

(6-6-4)図面を速く描くことも大切だが、品質とのバランスを考えて、ある程度時間をかけることもある

6-6-4

さーて、最後の設問です。
この設問ではですね、「時短と品質、どちらを重視するかはむずしい問題だけれど、結局はケースバイケースで考えるべきだし、要はバランスだよ!そうだろ、みんな!」と言いたかったわけです(だんだん雑)。
そんなわたしの魂の底からの叫びに対し、声の大小はあれど「いえー!」とレスポンスしてくれた方が全体の八割超。
うん、よし、満足!

と、次第にヤケクソ化してきた(疲れた)ところで、もうひとつ(まだ終わらなーい)。

(7)特許図面作成の効率化や、図面の品質向上のために行っている工夫

アンケートの最後に、「特許図面作成の効率化や、図面の品質向上のために行っている工夫」について記載していただきました。
この設問は自由回答です。最も多かったご回答はこちら。

(7-1)よく使用する図面要素の保存、登録
「電気回路記号、引き出し線等はシンボル登録して使用」
「引出し線、符号、矢印、破線、フローチャートはテンプレートに保存し、シンボル登録もしている」
「普段使用頻度の高いデータはライブラリー化し、作図者全員が使えるようにしている」など

このように、よく使う図面要素は、保存や登録をして使うという声が最も多かったです。
わたしも、十数年使っている年季の入ったライブラリーがありますよ〜。

(7-2)過去の案件の流用
「類似図面の使い回し」
「同じ様な図面は、前回のデータを流用して作業する」
「汎用品、機械要素等の図面は保存しておき、他の案件に流用する」など

同様に多かったのが、過去に描いた図面を流用するという回答でした。
ちなみに、わたしの最近のテーマは、いかにして過去案件をすばやく探せるようになるか、です。
長年描いていると、むかーし描いた似たような図面がどこにあるのか、埋もれてしまって見つけるのが大変になるんですよね。
サムネイル画像と整理番号のほか、キーワードなどを関連付けて検索できるような何かが(願わくば無料で)あったらいいですが…、どなたか良いアイディアがあったら教えてください。

(7-3)フリー素材の利用
「フリーで公開されているCADパーツデータ(2D、3D)をDLしておいて使用している」
「フリーの線画素材も利用する」

このように、フリー素材を利用するという声も上がりました。
ただし、商用OKかなど、利用規約は必ず厳重に確認しておく必要がありますので、そこは十分にお気をつけください。

(7-4)その他の少数回答
「製図ソフトのカスタマイズや、自作プログラムの利用により、効率的な描き方を工夫している」
「スクリプト、ショートカットを駆使し短時間で作図する」
「フリーソフトで印刷スピードアップ」
「最近は、材料毎のハッチングを積極的に使わない方向が有りますので、ハッチングの種類を用意している」
「複雑なCG画像などでの依頼があり、省略したトレースが可能な場合は、LEDトレース台で手書きトレースの後にCADで清書トレースした方が効率が良い場合があります」
「写真出願の際に綺麗なモノクロ/グレーに変換するためにPhotoshopでの色加工にこだわっている」
「所内ローカルルールであるIllustratorレイヤーを登録したファイルを開いて作図する」
「積極的に明細書担当とコミュニケーションをとり、彼らが依頼図で表せていない部分をフォローしたりより最適な表現に調整したりする」
「特許図面のイロハは文書化し、作図者全員に周知徹底する」
「下絵の時点で符号を全然つけないで依頼してくる明細書担当者の図面でも、過去の図面流用などで符号が残ってる場合はこっそり隠しレイヤーで符号と引き出し線をそのまま残しておいたりします」

と、現場ならではの様々な工夫をお寄せいただきました。
このような声をもっともっとたくさん収集したいものです。


と、いうわけで、これにてアンケートのご報告を終わります。
当初の想定に反して、おっそろしく長いアンケート報告となってしまいましたが、なかなかこれまで皆さんの考えを聞く機会はなかったため、個人的にとても興味深く、そして面白いアンケート調査になりました。
このアンケート結果から、何かひとつでも皆さまの心に残るもの、役立つもの、考えさせるものを残せたら、とてもうれしく思います。

それでは、また!

【特許図面の作成に関するアンケート】結果のご報告〔4〕

先月から募集していた『特許図面の作成に関するアンケート』の結果報告です。
思ったより長くなってしまってちょっと焦りつつ、四回目の今日は、特許図面作成者の皆さんが普段どのような考えで図面を作成しているのかを探る、意識調査の結果を報告します。

(6)意識調査
ここでは、回答者の皆さんに、設問に挙げた様々な行動や考えについて、普段の自分にどのくらい当てはまるかを答えてもらいました。

(6-1)依頼された下図に忠実であれば良く、図面の正確性や製図法に沿っているか等は考える必要性がない
6-1


(6-2)依頼された下図とできるだけ同じものを描くようにする
6-2


(6-1)、(6-2)は、下図にどれだけ忠実な図面を描くか、ということを探る設問です。
上記のグラフによれば、『若手+新人』層よりも、『ベテラン+中堅』層の方が、下図に忠実でなければならない、という縛りが少ないようです。
これはなぜでしょうか。

図面作成者に特許図面を依頼する「明細書作成者」の立場から言うと、
クライアントからいただいている下図に従わないということは、一歩間違えると、クライアントにその意を汲まない印象を与えたり、まるで「図面がヘンです」と上から物申しているようなイヤ〜な感じがするため、下図を安易に改変することはあまり好ましくありません(もちろん、人や場合にもよりますが)。
ですので、下図通りに描かないということは、基本的に、そうする根拠(このままでは分かりにくい、誤りがある、雑すぎる、など)があって初めて成り立つことです。
ここで、キャリアが長くなるにつれて下図への忠実度合いが下がる理由は、経験値によって上述のような下図を修正すべき根拠に気づきやすくなることが挙げられると思います。
また、(機械分野の図面のように)図面の正確性を期する場合は、完成した図面と下図とが異なっても許容されやすいことも重要です(下図に忠実に描くことよりも、正確性の追求に重きが置かれるためです)。
機械分野の図面は、正確性が求められると同時に難易度が一般的に高めであり、そのような図面はキャリアの長い図面担当者に回ることが多いですから、その分『ベテラン+中堅』層の下図への忠実度合いが下がるのかもしれません。
さらに、後述の設問(6-6参照)に出てくるように、キャリアが長くなるにつれて明細書担当者に対して直接下図について指摘(ダメ出しなど)ができるようになることも関係しているかもしれません。

一方で、下図に忠実であるか否かは、個人の意思だけでなく、環境によっても大きく変わると思います。
正確性や見た目がどうのと考えるヒマがないくらい忙しく、早く仕上げないと仕事が終わらない!という職場もありますし、「何も考えなくて良いから、下図通り仕上げてほしい」という明細書作成者が多い職場もあります。
また、明細書作成者との距離が遠く、下図に関して相談ができないため、結果的に盲目的に下図に従わざるを得ない職場もあるでしょう。
ただ、そんな環境でも、考えたところで無駄だとあきらめずに、「これはもっとこう描いた方がいいのでは?」という気づきだけは大切にしてほしいと思います。
いつか環境が変わったようなとき、そういう気づきはとても重要になるはずです。

(6-3)他の図面作成者よりも、美しい図面を描きたい
6-3


ちょっと変わった質問ですが、見た目上の美しさにどの程度こだわるかということを尋ねたかった質問です。
「当てはまる」、「やや当てはまる」が8割ほどを占めており、これはキャリアによってそれほど大きな差はありませんでした。
なお、これはわたしの個人的意見ですが、図面の見た目上の美しさはかなり重要だと思っています。
理由は単純で、出願人や明細書担当者などによる図面の評価の判断基準は、見た目の印象の要素がかなり大きいからです。
つまり、出願人や明細書担当者は、図面描きが見るような目線で図面を見ているわけではなく、パッと見で「イイ感じ」か「イマイチ」か判断している人も一定数いるということです(もっとちゃんと図面を見ろよ、と言いたくもなりますが…)。
よく「引出線だとか符号だとかは、分かるようにさえ描いてあれば、見た目なんか何でもいいんだよ」なんて話を耳にしますが、上記のように、全体のパッと見の印象が図面の評価を大きく左右する以上、本当に何でもいいということはなく、やはり綺麗に描いておいて損はないとわたしは思います。

(6-4)後々の修正や転用に対応しやすいよう、図面を描く際には工夫をする
6-4

こちらも、キャリア関係なくほぼ全体が、「当てはまる」、「やや当てはまる」と回答しています。
ですが、『ベテラン+中堅』層の方が、「当てはまる」と回答している割合が圧倒的に高く、回答に自信を感じますね。
ちなみに、実はこの設問、「当てはまる」、「やや当てはまる」と回答する方がこんなに沢山いるなんて、わたしはまったく予想していませんでした。
てっきり、「後々どんな修正がくるかも分からないのに、工夫なんてやりようがねーよ、バーカバーカ」と言われるかと思っていましたよ…いやあ、よかった…(ドキドキ)。
具体的に、修正や転用のためにどのような工夫をしているのか、非常に気になるところですね。
(…これも聞けばよかったなあ。)

(6-5)特許図面は適当でもいいので、あまり細かいことは気にせず描く
6-5

各層とも「当てはまらない」「あまり当てはまらない」が6〜8割を占めている一方で、「やや当てはまる」という回答も2割近くあります。
分かる、分かるけれども、図面描きとしては少しさみしい、と言いたくなる結果です。
特許事務所に所属していると、たびたび耳にするこの「特許図面は適当でもいい」の言葉。
確かに、図面の内容や発明の分野によっては適当でも済むものもあります。
例えば、制御系やIT系などの発明は、図面が多少いい加減でも許されるところがあると思いますし、ブロック図なんて適当に描いても真剣に描いても、誤字脱字や図内容の誤りさえなければ、特に問題にはなりません(もちろん問題にならないというだけで、見た目による評価はひそかに下がっているかもしれませんが)。
このように、適当で済む図面がある一方で、(何度も言いますが)機械分野の図面など、適当では済まない図面も確かにあります。

ただ、図面描き自身が「特許図面は適当でいい」と考えるのは、下図への忠実度合いと一緒で、本人の意思ばかりではなく、環境の影響も大きいんですよね。
図面の依頼者のほとんどが「特許図面は適当でいい」と考えていたらその考えが伝染するのは当然ですし、依頼図の8割をブロック図やフローチャートが占めていたら、適当でいいという考えも合理的といえるでしょう。
(とはいえ、やっぱり図面描きとしてはさみしいなー、と個人的には思っています。)

(6-6)図面から発明を把握する努力をし、図面の内容に誤りがあれば、修正したり指摘したりする
6-6

(6-5)の設問と比べると、一転してアグレッシブな設問です。
期待したとおり、『ベテラン+中堅』層では、「当てはまる」が75%、残りの25%は「やや当てはまる」と、全員が「修正・指摘をする」という非常に頼もしい結果になりました。
一方、『若手+新人』層では、「当てはまる」と「やや当てはまる」が多数派(合わせて70%)ながら、『ベテラン+中堅』層に比べると後退し、さらに「どちらともいえない」「あまり当てはまらない」という回答もみられます。
設問中には、「修正」だけでなく「指摘」という言葉もありますので、明細書書きに向かって「これはおかしいですよ」と指摘しなければいけないと考えると、少しハードルが高く感じられるのかもしれません。
ここに、『若手+新人』層の躊躇と不安が読み取れるような気がします。
そうだとしても、このグラフ6-6の『ベテラン+中堅』層の結果をみれば、十年も経つと皆が当たり前のように「修正・指摘」ができるようになっているわけですから、若手や新人の皆さんも心配せずに、どんどん意見を言えるようになってほしいと思います。

と、そんなところで、今回のご報告は終わりとします。
ずいぶん長くなってきました。次回あたりですべて出しきりたいところです…(自信はない)。
では、また次回お会いしましょう!

なお、今回のアンケートに関して、ご感想やご意見などがありましたら、お気軽にコメント欄にお寄せください。
どうぞよろしくお願いいたします。


***

ついでと言ってはなんですが、ちょっとだけ宣伝。
10月6日に、「特許図面作成講座(実践篇)」と銘打って、特許図面の作成実習を行います。

普段、特許図面作成者の皆さんは、下図を依頼されて図面を描くお仕事をされることが多いと思いますが、
今回は、その逆、つまり、発明の内容を聞き、自分なりに考えて必要な図面を描いてみる、という流れでセミナーを行います。
このように、いつもと違う流れで図面を描くことで、普段自分で描いている特許図面が表す意味を理解しやすくなったり、図面に表れる重要なポイントを見つけやすくなったりと、様々な気づきがあると思います。
ご興味のある方はぜひ、ご参加ください。
ちなみに、セミナー講師は不肖ながらわたくしが務めさせていただきます!

場所は、いつもの国立オリンピック記念青少年総合センター。
ただし、いつものセンター棟ではなく、「カルチャー棟」という別の建物になりますので、ご注意くださいね。
それでは、また次回!

181006

【特許図面の作成に関するアンケート】結果のご報告〔3〕

先月から募集していた『特許図面の作成に関するアンケート』の結果報告です。
三回目の今日は、図面を描く際、何を重要視しているか、というテーマについてです。

(5)図面を描く際、何を重要視しているか
特許図面を描く際、重要視していることは何かを尋ねました(グラフ5-1)。
5が最も重要視する度合いが高く、1が最も重要視する度合いが低いスコアになります。

5-1

平均のスコアが最も高く、それも、ほぼ満点に近かったのは「発明の内容を的確に表す」と「図内容の分かりやすさ」でした(平均4.9)。
これはとてもうれしい結果です。
普段から、「特許図面描きはトレースだけが仕事じゃない、自分で考えて発明を分かりやすく表現するべきだ」てなことを隙あらばわーわー言っているわたくしですが、当然のように皆さん分かっていたということですね。
今回のアンケートを通して、「お前に言われんでも分かっとる」という前田智徳ばりの声が聞こえてきた気がしました。

その他をスコアの高い順に並べてみると、
「図面の見た目上の美しさ」&「丁寧に描く」(平均4.3)、
「短時間で描く」(平均4.1)、
「製図法に従う」&「下図に忠実に描く」(平均3.6)、
「図面に自分の個性を出す」(平均2.3)
という結果でした。
では、ここで、キャリア間の違いを見てみましょう。

5-2-5

『ベテラン』層は、他の層よりも「図面の見た目上の美しさ」(平均4.8)と「丁寧に描く」(平均4.7)、さらに「製図法に従う」(平均4.3)が高いことが分かります。
さらに、「図面に自分の個性を出す」(平均2.8)のスコアが全ての層の中で最も高い一方で、「短時間で描く」(平均3.7)のスコアは全ての層の中で最も低くなっていました。
短時間で速く描くというよりも、正確で質の良いものを、じっくり(個性もある程度出しつつ)描こうという、ベテランの余裕が垣間見える結果ですね。
『中堅』層、『若手』層は、「下図に忠実に描く」のスコアがそれぞれ平均3.3、3.4と、他に比べて少々低めなのが特徴的です。
『新人』層では、「下図に忠実に描く」(平均3.9)のスコアが全ての層の中で最も高く、「製図法に従う」(平均3.2)のスコアは全ての層の中で最も低くなっていました。
また、「図面の見た目上の美しさ」(平均4.3)と「丁寧に描く」(平均4.5)が、『ベテラン』層に次いで高いのも特徴です。
ここから、読み取れるのは、できるだけ下図に忠実に、丁寧に、美しく図面を描くことで精一杯で、製図法に従うところまで手が回らない(もしくは、製図法について勉強が行き届いておらず、今はまだよくは分かっていない)という姿ですかね。
わたしが特許図面を描き始めたばかりの頃もそうだったなー、と、思わず遠い目…。

ここで、「製図法に従う」の項目がベテラン以外では4.0未満と意外に低スコアだったので、前回、(5)現物からの作図で、現物からの作図が『頻繁にある』層(=機械分野の作図を頻繁にしていると考えられる層。以下『現物頻繁』層といいます)の結果も調べてみました。

5-6

ご覧のように、『現物頻繁』層では「発明の内容を的確に表す」と「図内容の分かりやすさ」だけでなく、「図面の見た目上の美しさ」も満点スコア(平均5)でした。
さらに、「製図法に従う」と「丁寧に描く」も非常に高いスコアとなっています(平均4.6)。
前回の(5)「図面を描く際に何を重要視しているか」で見たように、『現物頻繁』層は、正確に作図する意識が高い、あるいは正確な作図が要請される環境にいるため、製図法に従う意識も高いようです。
一方で、「下図に忠実に描く」(平均3.4)のスコアはどちらかというと低めです。
これも、下図がいい加減だと判断すれば下図の修正を辞さない(=大きな修正を加えてでも正確な図面を描く)ということが考えられますね。
ここでも『現物頻繁』層の、正確性に重きを置いた品質重視の姿勢が垣間見えておもしろいですね。
近頃、現物から図面を起す機会が増えてきたという方や、物の形状や構造に関する図面の依頼が多くなってきたという方は、上記の点を参考にしてみると図面の評価が上がるのではないでしょうか。

と、そんなところで、今回のご報告は終わりとします。
次回は、特許図面作成者の皆さんが普段どのような考えで図面を作成しているのかを探る、意識調査についてご報告させていただきます!

なお、今回のアンケートに関して、ご感想やご意見などがありましたら、お気軽にコメント欄にお寄せください。
どうぞよろしくお願いいたします。

【特許図面の作成に関するアンケート】結果のご報告〔2〕

先月から募集していた『特許図面の作成に関するアンケート』、前回から順次結果をご報告させていただいています。
今回のテーマは、3D CADと、現物からの作図についてです。

(3)3D CAD(つづき)
次に、3D CAD使用者に、使用している3D CADを聞いてみました(グラフ3-5)。

3-5

最も多かったのが、Design Spark Mechanical(デザインスパークメカニカル)です。
Design Spark Mechanical(デザインスパークメカニカル)は、粘土をこねるように感覚的なモデリングが特徴的な、無償の3D CAD。
3Dのミラーコピーができない、ロフトなど複雑なソリッドモデリングは苦手、断面図は2D図面に出力できないなどなど、無償なので「うーん」な点ももちろんありますが、それを補って余りある使いやすさと分かりやすさ。
わたしの知人は、ことあるごとに「デザインスパークメカニカルに慣れると、もう他の3D CADを使いたくなくなる」と言っています。
これにはわたしも同感。
「粘土をこねるように扱える」ってほかの3D CADの謳い文句でも見かけたことがありますが、使ってみるとデザインスパークメカニカルの方がしっくりくる!
ただ残念なのは、扱えるファイル形式が少なく、特にSTEPファイルが読み取り専用で編集はできないことでしょうか(ただし、2D図面を出力することは可能です。また、STEPファイルとIGESファイルの編集が可能になる拡張モジュールも販売されています)。

二位のFree CAD(フリーキャド)は、オープンソースの無償3D CADです。
様々な用途に特化したワークベンチを使い分けるのが特徴で、無償にしては高度かつ多種多様な機能を備えています。
しかし、その分ユーザーインターフェースが複雑になっていて、慣れるまでには少し時間がかかるかもしれません。
また、IGESやSTEPのほか、STLやOBJなど、多数のファイル形式をサポートしているのも大きな特長です。
先ほどのデザインスパークメカニカルでは編集できないSTEPファイルの場合、わたしはこちらのフリーキャドを利用しています。

次いで、Solid Works(ソリッドワークス)、Inbentor(インベンター)と、今度は有償の3D CADがつづきます。その他としては、Sketch Up(スケッチアップ)、Creo Elements/Direct Modeling Express(クレオエレメンツ)、Fusion 360(フュージョンスリーシックスティ)などが挙がりました。
一方、「使用したことはないが、今後使用の予定がある」と回答された方が、今後使用を予定している3D CADとしては、Free CAD(フリーキャド)やRhinoceros(ライノセラス)が挙がっていました。
今後、特許図面作成に3D CADを使用したいと考える方は、先ほどの3D CAD使用者のグラフに挙がったソフトも参考にご検討されてみるのも良いかと思います。

興味深かったのは、3D CADを使用している方の半数以上(67%)が、複数の3D CADを併用している、ということです。
また、複数の3D CADを併用している方のうち、「有償の3D CADがある環境でも無償の3D CADを併用している」というケースが56%もありました。
これには、「一方の3D CADでできないことを他方の3D CADで補うため」や「多様なファイル形式に対応するため」などの理由が考えられますね。

(4)現物からの作図
次に、クライアントから受け取った現物(実際の発明品や、それに近い形状/構造の物など)から図面を起すことがあるか否かを質問しました(グラフ4-1)。
ほとんどの方が、受け取った現物から作図した経験があることが分かります。

4-1

では、どのような方法を用いて現物から作図をしているのでしょうか。
「写真を撮ってトレースする」、
「寸法を測って寸法通りに作図する」、
「寸法を測って3Dモデリングし、図面を出力する」、
「写真は撮らず、寸法を測らずに、見た目をスケッチし図面化する」
という4つの方法について、どれくらいの頻度で行うか尋ねてみました。

図面の正確性を重視する場合、「寸法を測って3Dモデリングし、図面を出力する」や「寸法を測って寸法通りに作図する」の頻度が高くなると思います。(ただし、3Dモデリングするには、3D CADが必要になります。)
「写真を撮ってトレースする」は、寸法値を測りにくいもの(例えば、複雑なRを持つペットボトルなど)を描く場合を除いて、どちらかといえば正確性よりも時間短縮を図る場合にとる手段といえます。
「写真は撮らず、寸法を測らずに、見た目をスケッチし図面化する」は、美術的なデッサンの手法としては一般的ですが、やはり図面化の手段としては正確性が低く、時間短縮をより重視した方法といえます。

4-2

グラフ4-2は、1が最も低頻度で4が最も高頻度を表しています。
つまり、全体の平均では、「写真を撮ってトレースする」頻度が最も高く(平均3.0)、「寸法を測って寸法通りに作図する」頻度がそれに次いで高い(平均2.5)ことになります。「寸法を測って3Dモデリングし、図面を出力する」、「写真は撮らず、寸法を測らずに、見た目をスケッチし図面化する」の頻度は低く、それぞれ平均1.7でした。
全体としては、正確性も時間短縮も「ほどほどに重視している」という印象ですね。歯切れの悪い表現ですが。
「寸法を測って3Dモデリングし、図面を出力する」に関しては、全体の3D CAD使用率が45%であり、かつ、3D CAD使用者のうち自分で一から3Dモデリングを行う方が63%という状況を考えると、妥当な数字です。

ここで、『ベテラン+中堅』層と、『若手+新人』層で、作図の仕方に違いがあるか、見てみます。

4-3-4

『若手+新人』層と比較すると、『ベテラン+中堅』層では、「寸法を測って寸法通りに作図する」頻度が上昇していることが分かります。
『ベテラン+中堅』層の方が正確性を意識している、というところでしょうか。

では、今度は、現物からの作図が『頻繁にある』と回答した層と、『ときどきある』と回答した層を比較してみます。

4-5-6

今度ははっきりとした違いがグラフに表れています。
『ときどきある』層は、先ほどの『若手+新人』層と同じように、「写真を撮ってトレースする」頻度が高めで、「寸法を測って寸法通りに作図する」頻度は低くなっています。
一方、『頻繁にある』層では、「写真を撮ってトレースする」頻度も高め(平均3.2)ですが、それ以上に「寸法を測って寸法通りに作図する」頻度が他に比べて非常に高くなっている(平均3.6)ことが分かります。
その一方で、「見た目をスケッチし図面化する」は平均1.4と他より低いことがわかります。
また、「寸法を測って3Dモデリングし、図面を出力する」も平均2.0と、他と比べて少々高くなっています。
これらを総合すると、現物からの作図が『頻繁にある』層は、正確に作図する意識が高い、あるいは正確な作図が要請される環境にいる、といえます。

基本的に、現物から図面を描く場合、その発明はほとんどが機械系に属する発明(=物の形状や構造に関する発明)といえると思います(もちろん、例外もあると思いますが)。
一月の特許図面セミナーでも少しお話しましたが、機械分野は図面の重要性が他の分野と比較して圧倒的に高いです。
なぜかというと、機械分野の発明は技術的特徴を視覚的に表現できるため、図面が明細書を補う度合いが非常に高いからです。
つまり、現物からの作図を頻繁に行う環境とは、機械分野の発明が高頻度に発生する環境といえますので、そもそも図面の正確性が高く要請されており、寸法を計測して描く正確な作図が増えるのではないかと推測されます。
同じ特許図面制作の現場でも、これだけの違いが現れるとはおもしろいですね。


さて、そんなところで、今回のご報告は終わりとします。
次回は、図面を描く際に重要視していることなどについてご報告させていただきます!

なお、今回のアンケートに関して、ご感想やご意見などがありましたら、お気軽にコメント欄にお寄せください。
どうぞよろしくお願いいたします。

【特許図面の作成に関するアンケート】結果のご報告〔1〕

先月から募集していた『特許図面の作成に関するアンケート』、多肢にわたる質問だったにも関わらず、多くの方々から回答をいただくことができました!
皆さまのご理解とご協力に、厚く御礼申し上げます。
では、アンケート結果についてご報告します。

(1)勤務先とキャリア

1-1


まずは、アンケートにご回答いただいた方の勤務先の内訳です(グラフ1-1)。
特許事務所勤務が六割程度、次いで、フリーランス、図面制作会社、その他と続きます。その他の回答には、メーカーや翻訳会社というご回答がありました。

1-2


さらに、どのくらいの期間、特許図面作成に携わっているかについて質問しました(グラフ1-2)。
パッと見ではキャリア10〜20年未満や20年以上の層が厚く見えますが、10年単位で区切るとキャリア0〜10年の層の回答者の方が最も多くなっています。
結果として、経験の浅い方から経験豊富な方まで大きく偏ることなくアンケートにご参加いただくことができました。
JAVCのサイトやブログを見てアンケートに参加された方が多いことを考えると、新人からベテランまで様々なキャリアの方がJAVCの情報を収集しているといえます。

なお、今回のアンケートでは、キャリアによってどのように行動や考え方が変わるのかということを探るために、便宜的に、キャリアが「一年未満」と「一年以上三年未満」と回答された方を『新人』、「三年以上五年未満」と「五年以上十年未満」と回答された方を『若手』、「十年以上二十年未満」と回答された方を『中堅』、「二十年以上」と回答された方を『ベテラン』と区分して、統計をとっていこうと思います。
※新人や若手などという言葉はそれとなく年齢を匂わせる言葉ですが、年齢とは関係なく(今回のアンケートでは回答者の年齢は収集していません)あくまでキャリア年数をイメージさせるために便宜的に使っている言葉であることをご了承ください。

(2)作図ソフト

2-1


メインの作図ソフトは、グラフ2-1に示すように、イラストレーター(アドビシステムズ)が他を圧倒して堂々の一位でした。
すべてのキャリア層で過半数を超えていて、特に『新人』層では使用率100%であり、特許図面業界を席巻しているといっても過言ではありません。
次いで二位が、オートCAD(オートデスク)。
さらに、その他の少数意見として、ビジオ(マイクロソフト)、ベクターワークス(ベクターワークス)、BVファイル(ビッグバン)などが挙がりました。

2-2


メイン以外の作図ソフトについてもお尋ねしました(グラフ2-2)。
ここでは、オートCADが最も多く、次いでビジオ、イラストレーターという順位です。
このほか、少数意見として、花子(ジャストシステム)のほか、ドラフトサイト(ダッソーシステムズ)、オープンオフィスが挙がりました。
個人的にとても面白かったのは、ビジオの人気が意外と根強い、という点です(^^)。
大人気というわけでもなく、とても地味ですが、それでもずーっと一定の人気を保っているビジオ。なんだか映画の名脇役みたいな存在ですね^^

(3)3D CAD
次に、3D CADの使用状況についても質問してみました(グラフ3-1)。
結果は、なんと真っ二つ。全体だと、使用していない派が、使用している派をほんの少し上回っています。

3-1

3-2


さらに詳しく内訳を見てみましょう(グラフ3-2)。
最も多かった回答は、「使用したことはなく、今後も使用する予定はない(39%)」でした。
わたしもクライアントから3Dデータが送られてくるようになってやっと3D CADを使う必要性を感じたことを考えると、まだまだ必要はないと感じる環境が多いのでしょう。
ただ「使用したことはないが、今後使用の予定がある」という回答と「使用している」という回答を合わせれば、過半数を超える61%になり、今後、特許図面作成者の間でさらに3D CADが普及していく予感もあります。
今後、どのように環境が変わっていくかが鍵となりそうです。

キャリア別にも見てみましょう(グラフ3-3)。

3-3


キャリア別に比較してみると、『中堅』層に突出して3D CADの使用者が多いことが分かります。
他の層では3D CADの使用率は20〜50%程度であるのに対し、『中堅』層では使用率が80%を超えており、かつ、高頻度で3D CADを使っているのはこの『中堅』層にしかおらず、さらに、『中堅』層の3D CAD使用者の半数以上が「頻繁に使用している」と回答しています。
どうしてこのような差が付くのか、はっきりとしたことは分かりませんが、『中堅』層は、仕事に役立つものを積極的に取り入れる傾向があるようです。
下のグラフ3-4は、「テクニカルイラストレーションの技法など、仕事に役立つものは積極的に取り入れる」という設問に対し、普段の行動や考えにどれほど当てはまるかをご回答いただいたグラフですが、「当てはまる」という回答が『中堅』層では群を抜いて高いことが分かります。

3-4


さてさて、先が長いので、今回のご報告はここまでとします。
次回は、使用している3D CADソフト名や、現物からどのように作図をするかについてなどをご報告させていただきます!

なお、今回のアンケートに関して、ご感想やご意見などがありましたら、お気軽にコメント欄にお寄せください。
ではまた次回!

「写真トレースのための透視図入門」へのご参加ありがとうございました

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先週末、「写真トレースのための透視図入門」を開催しました。
世の中はお盆休み、かつ猛暑(そして、ゲリラ豪雨でもきそうな空の気配)という、決して好条件とはいえない中でしたが、
たくさんの方に足を運んでいただきました。本当にありがとうございました。

セミナーの今回のテーマは、「透視図」です。

実は現在、JAVCでは、
透視投影図についてちょっとしたプロジェクトが進行しているのですが、
そのプロジェクトの件で、JAVC透視投影図班に応援を頼まれたために、
今回、わたしは透視投影図についてそこそこ予習をした上でセミナーに臨んだわけです。

が…、やっぱりむずかしい!
脳みそが捻転するかと思うくらいむずかしい!! キィーーッ!

等角投影図と比べると、透視投影図の理論というのは、(わたしにとっては)非常に複雑怪奇。
例えば「消失点」や「対角消失点」を機械的に求めて、簡単な透視図なら描くことはできるんですが、
「どうしてこのような描き方で描くことができるのか」というのが、どこまでも腑に落ちないんですよね。
透視図の世界というのは、感覚的な理解を拒む世界、とでも言いましょうか、「なんとなく」では絶対に分からない数学の城砦…という印象を受けます。

とはいえ、
理解がむずかしくても「教わった通りの方法で描けばできる」というのが透視図のミソで、
例えば、今回のテキストにあった、
既存の(三点透視の)写真などから正投影図を描く、という手法なんて、
今後、仕事でも(例えば、超適当に撮られた意匠写真を、正投影図にするような場合に)使えるんじゃないかと踏んでいます(四角っぽい形ならば…かな)。

セミナー後の懇親会のときに、今回のセミナーの講師にお話を伺ってビックリしたのは、
元々透視図について学んだことはなく、仕事で実際に描いているうちに、自然に透視図を理解して、自然に描いていた、という点です。
なんというか、天才肌ってこういうことをいうんですね。


さて、JAVC特許図面班も、透視投影図班に負けないようがんばらなくては。
アンケートといいセミナーといい、このところひとりで特許図面みこしをかついでワッショイしているわたくしですが、
最近は、少しずつ、心強い仲間ができてきたような…(感謝)。


※おまけ※ 特許図面の作成に関するアンケート、まだやってまーす♪(8/24まで)

アンケートに回答する

普段から特許図面の作成に携わる方、ぜひ、ご協力をお願いします♪



【特許図面作成に関するアンケート】、ひきつづきご参加をお待ちしています

アンケートトップ


先日もご案内させていただきましたが、JAVCでは今、「特許図面作成に関するアンケート」を実施しております。

どんなアンケートかというと、
「特許図面描き」という希少生物の生体調査…じゃなくて(笑)、
てっとり早くいえば「特許図面作成者の意識調査」という感じです。
特許図面作成者の皆さまが、どんなソフトを使って特許図面を描いているか、や、
何を重視して特許図面を描いているのか、などなどをお尋ねします(匿名で参加することができます)。

このアンケートを行う目的は、特許図面作成者の皆さまの疑問や必要としていることは何なのかを知る、というのが第一です。これを受けてJAVCでは、特許図面セミナーなどを通して、より細やかで質のいい情報発信で応えていきたいと考えています。

集計結果は、回答締め切り(8/24)ののち、順次この場(JAVCブログ)などで公開していく予定です。
皆さまのご協力を、どうぞよろしくお願いいたします。

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